第696回 見える子ちゃん

第696回 見える子ちゃん

令和七年六月(2025)
立川 シネマシティ

 私は自分がさほど不信心とは思わないが、スピリチュアル系には興味がなく、宇宙人も超能力も大予言も霊感商法もまったく信じない。ところがフィクションは別で、出来のいいSFやファンタジーは好きだ。怖いオバケ映画も悪くないが、怖がらせることに特化したホラーやゲテモノスプラッターよりも、背筋がぞっとする心理的な怪談がより怖い。
 幽霊がいるかいないかは別として、霊的なものが見えると言う人には、私はあえて反対はしない。霊とは形ある物体ではなく、心が感じる個人的な思念だと思う。
『見える子ちゃん』はタイトルからして、軽い学園オカルトコメディである。原作は漫画で、アニメにもなっているらしい。主人公は群馬県の高校に通う女生徒みこ。彼女は死んだ人の霊が見えることに悩んでいた。道路脇に供えられた花束。そこにうずくまる幼い男の子の霊が見えたので、思わず声をかけたら、「見えるの」と言われて、走って逃げたが家までついてきた。見えることに気づかれたら、とりつかれる。そのため、見えてもなるべく無視することに決めている。学園祭が近づき、みこは女生徒のユリアと男子生徒会長の権藤に声をかけられた。あなた、見えてるんでしょ。どうして見えないふりしてるの。ユリアは霊能力があり、幼少の頃から死者が見えるのだ。同じく心霊現象に詳しい権藤が言うには、三十年以上前の文化祭で落盤事故があり、生徒やその家族が何人も命を落とし、その霊たちが死んだことに気づかず、文化祭が近づくと活気づいて出て来るという。
 そんな中、みこの親友で級長のハナが急に苦しみ、入院する。どうやら悪い霊にとりつかれたようだ。権藤の助言とユリアの除霊の力を借り、みこは悪霊の正体を突きとめ、ハナを救うために力を尽くす。みこに霊が見えるようになった悲しいきっかけもわかる。
 この映画は『シックスセンス』同様、予備知識なしで観るべきだ。私はこの映画の原作漫画もアニメも見ていないので、うまく騙され、楽しめた。ゆえにネタバレ厳禁。
 監督は『アヒルと鴨のコインロッカー』や『ちょんまげぷりん』のベテラン中村義洋、みこの両親が滝藤賢一と高岡早紀なのもうれしい。

見える子ちゃん
2025
監督:中村義洋
出演:原菜乃華、久間田琳加、なえなの、山下幸輝、堀田茜、吉井怜、高岡早紀、京本大我、滝藤賢一

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