第699回 ストリート・オブ・ファイヤー

第699回 ストリート・オブ・ファイヤー

昭和五十九年八月(1984)
大阪 梅田 OS劇場

 ウォルター・ヒルは最初、脚本家としてペキンパー監督の『ゲッタウェイ』などを書いていた。私が最初に出会った監督作品は一九七九年の『ウォリアーズ』で、不良グループが次々と別のグループと対決しながら逃げ回る抗争もの、脚本もヒル本人である。
 その次が大阪の実家に帰省中、学生時代の友人とシネラマのOS劇場で観た『ストリート・オブ・ファイヤー』だった。派手な暴力描写、鳴り響くロックミュージック、圧倒的な迫力に感動し、友人と飲みながら感想を語り合ったことが懐かしい思い出になっている。
 物語の背景になる時代設定や場所は特定されていないが、一九五〇年代風のファッションと風俗。ロックンロールのコンサートで、スター歌手エレンが歌い、会場が盛り上がっている。そこへレイヴェン率いる愚連隊がバイクで乗り込み、エレンを拉致する。エレンのかつての恋人トム・コーディが町に舞い戻り、女兵士のマッコイを相棒にして、マネージャーのビリーといっしょに愚連隊ボンバーズの本拠に潜入して、エレンを救出。最後は愚連隊と警官隊が見守る中、トムとレイヴェンのハンマーを使った一騎打ち。
 この映画の影響で一九五〇年代の風俗が若者の憧れとなり、翌年、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が作られたのではないか、と私は密かに思っている。
 エレンのダイアン・レインはその後スターとして主演作も多く、脇役でも活躍が続く。マネージャー役のリック・モラニスはコメディアンとして成功し、『ゴーストバスターズ』『スペースボール』『フリントストーン』などで重要な脇役をこなし、ミュージカル『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』では主演し歌っている。ぶっきらぼうなトム役のマイケル・パレは役にめぐまれず、俳優は続けていても、これといったヒット作はない。
 愚連隊ボンバーズのボス、レイヴェンのウィレム・デフォーは凶悪な面構えから、一躍売れっ子になり、悪役、脇役、主役と幅広く、出演者の中では一番のスターとなった。
 ウォルター・ヒル監督は暴力描写に定評があるが、私が一番好きなのは、黒澤明の『用心棒』を禁酒法時代でリメイクした『ラストマン・スタンディング』である。

ストリート・オブ・ファイヤー/Streets of Fire
1984 アメリカ/公開1984
監督:ウォルター・ヒル
出演:マイケル・パレ、ダイアン・レイン、リック・モラニス、エイミー・マディガン、ウィレム・デフォー、デボラ・ヴァン・フォルケンバーグ

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