第721回 サムシング・エクストラ!
令和七年十二月(2025)
立川 シネマシティ
宝石店を襲った二人組の強盗。黒づくめに動物の仮面。うずくまって震えているカップルの客。若い強盗が客に訊く。おまえら、なんでここにいる。すると、男が情けなそうに結婚指輪を買いに来たという。強盗はケースの中の指輪をつかんで男に投げてやる。これで、この若い強盗の性格がわかる。宝石の詰まった鞄を抱えて、路地に逃げ込み、準備してあった服装に着替える。どうやら親子で悪事を働いているらしい。父が息子パウルの間抜けな変装用の服を見て、顔をしかめる。障害者スペースに停めてあったため、逃走用の車はレッカーされており、警官たちが周囲の捜査を始めている。さて、どうするか。
たまたま、すぐその横で障害者施設の団体が夏のバカンスに出かけるところ。初参加の新入りが遅れてなかなか姿を見せない。介護員のアリスが間抜けな格好をしているパウルを見つけ、新入りのシルヴァンと思って声をかける。それを幸いに、父が介助者になりすまし、ふたりで障害者のバカンスに紛れ込む。この発端だけで笑える。
バスに乗っているのは様々な障害を持つ十一人の男女。世話する介護者が三人。それぞれがみな個性的。そこに宝石泥棒の親子が加わって田舎のコテージでバカンスを楽しむ。ゲーム、歌、瞑想、屋外スポーツ、すべてがユニーク。毎度の食事があまりにまずいので、とうとうみんなでスーパーに買い出しに行き、料理も作る。障害者も介護者も犯罪者も打ち解ければ、みんな仲良し。アラン・ドロンとダリダの「甘い囁き」が大音響で流れる。
待ち合わせに遅れた本物のシルヴァンの行方も、ちらっと紹介されて、それも見事。
この映画の最大の素晴らしさは、十一人の障害者を演じているのが、健常者の俳優ではなく、実際に障害を持つ人たちが選ばれたこと。ドキュメンタリーではない。障害者が障害者の役を演じるコメディ。自然であり、そこには障害者への過剰な同情も美化も嘲笑も差別もない。人には個性がある。だれもが他の人とはちょっと違っていて、同じでなくてもいいではないか。ハンディキャップもまた、個性のひとつなのだ。映画を観ている観客もいっしょに楽しい気分を味わえる。そして、最後のお楽しみ、聖夜の奇跡も。
サムシング・エクストラ!/Un p'tit truc en plus
2024 フランス/公開2025
監督:アルテュス
出演:アルテュス、クロビス・コルニアック、アリス・ベライディ、マルク・リゾ、セリーヌ・グルサール、アルノー・トゥパンス、マリ・コラン、テオフィル・ルロワ

