第698回 ノッティングヒルの恋人
平成十一年十二月(1999)
飯田橋 ギンレイホール
『MaXXXine マキシーン』を観て、ふと思った。女優が女優を演じる映画は他にも名作がいくつもある。グロリア・スワンソンが世間から忘れられた往年のハリウッドスターを演じた『サンセット大通り』、ブリジット・バルドーがファムファタール的な映画スターを演じた『ラムの大通り』、他にも『スタア誕生』のジュディ・ガーランドや『アメリカの夜』のジャクリーン・ビセットなど演じる女優と役柄がほぼ等身大の場合が多い。
中でも忘れられないのがジュリア・ロバーツの『ノッティングヒルの恋人』である。
ゴージャスな美女であり、演技力もあるので、『プリティ・ウーマン』の可愛い娼婦役以来、次々と主演作が続いて大スターとなったジュリア・ロバーツ。私はシリアスな作品よりも『ベスト・フレンズ・ウェディング』や『エリン・ブロコビッチ』など、ひねりの利いたものが好きだ。映画スターを演じた『ノッティングヒルの恋人』は相手役のヒュー・グラントをはじめ、個性豊かな英国俳優に恵まれた夢のようなコメディである。
ロンドンの西にある青空市で人気のノッティングヒルで旅行専門書の小さな書店を開いているウィリアム・タッカー、新作映画の宣伝で訪英中のスター女優アナ・スコットとひょんな偶然で知り合う。タッカーは三十代後半で離婚歴あり、収入もぱっとせず、ごく平凡だが、誠実でそこそこ二枚目。アナは世界中で顔と名前の知られたハリウッドの映画スター。このふたりがいかにして惹かれ合うのか。いい感じになったところで邪魔が入ったり、タッカーの恋を友人たちが応援したり、トラブルに見舞われたり。
ありえないような設定なのに、すんなりと入っていける。そして、タッカーの友人たち同様に、ふたりの恋を応援したくなる。これぞ、ロマンチックコメディ。
ハリウッドの大スターである美女がノッティングヒルで平凡な書店主に言う。まともな人との関係を大切にしたい。どんなに有名でも、わたしはひとりの女。好きな人の前に立ち、愛してほしいと願っている。はたして彼女の願いは叶うのだろうか。
ノッティングヒルの恋人/Notting Hill
1999 イギリス/公開1999
監督:ロジャー・ミッシェル
出演:ジュリア・ロバーツ、ヒュー・グラント、リス・エヴァンス、ジーナ・マッキー、ティム・マッキナリー、エマ・チャンバース、ヒュー・ボネヴィル、ジェームズ・ドレイファス、アレック・ボールドウィン