第712回 フランケンシュタイン(2025)

第712回 フランケンシュタイン(2025)

令和七年十一月(2025)
池袋 シネマロサ

 コロナ以降、試写室ではなく配信だけの試写が増えた。そればかりか、家にいて古今東西の映画やドラマが見放題というインターネットの動画配信サービスもあり、世の中便利になったものだ。ただし、私は基本的に家で映画を観ないので、劇場公開のない配信のみの作品は観たくても観られない。
 そんな中、ネットフリックスのデル・トロ監督『フランケンシュタイン』が配信にさきがけて、都内の映画館で上映された。うれしくなって、さっそく出かける。
 私はフランケンシュタインが大好きで、メアリ・シェリーの原作は角川文庫の山本政喜訳で若い頃に読んだ。
 映画では最初に観たのがメル・ブルックスのパロディ『ヤング・フランケンシュタイン』、そしてウド・キアの『悪魔のはらわた』、戦前のボリス・カーロフ版『フランケンシュタイン』、スティングとクランシー・ブラウンの『ザ・ブライド』、メアリ・シェリーが主人公の『ゴシック』、ジェームズ・ホエール監督が主人公の『ゴッド・アンド・モンスター』、アボットとコステロの『凸凹フランケンシュタインの巻』、ゲテモノポルノ風『フランケンフッカー』、東宝怪獣映画『フランケンシュタイン対地底怪獣』、ティム・バートン『フランケンウィニー』などなど、映画館を探し回ってけっこう観ている。
 一九九四年のケネス・ブラナーの『フランケンシュタイン』は医学者ヴィクター・フランケンシュタインが創造した怪物と対決するメアリ・シェリーの原作にかなり忠実だったが、今回のデル・トロ版は十九世紀半ばの風俗や科学技術をさらにリアルに再現し、カーロフからブラナーまでの過去作品のイメージをも加味して贅沢に膨らませている。
 北極の近くで氷山に閉じ込められた貨物船の船長を相手に瀕死のヴィクターが語る。それが生命創造の物語であり、やがて、そこに現れた怪物も自らの思いを吐露する。
 父男爵に厳しく躾けられたヴィクターのおいたちと医学への野心、不死身の肉体を持って生まれた怪物の苦悩と成長、そしてヴィクターの弟ウィリアムの婚約者でありながら怪物に魅せられる花嫁エリザベスの心情も描いて、奥深い出来になっている。

フランケンシュタイン/Frankenstein
2025 アメリカ/公開2025
監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:オスカー・アイザック、クリスチャン・コンヴェリー、ジェイコブ・エロルディ、ミア・ゴス、クリストフ・ヴァルツ、ラース・ミケルセン、ラルフ・アイネソン

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