第722回 コート・スティーリング

第722回 コート・スティーリング

令和八年一月(2026)
立川 シネマシティ

 思わぬ拾い物であった。主演のジェラルド・バトラーは『エルビス』でもさほど印象に残っておらず、ダーレン・アロノフスキー監督作も以前に何本か観ているが、特に気に入った作品は思い浮かばない。だから今回、あまり期待せず、よくあるちんぴらアクションだろうと思ったら、野球と猫が隠し味の、とんでもないクライムストーリーなのだ。
 時代は一九九八年、ニューヨークの場末のバーでバーテンダーをしているハンクはジャイアンツの大ファン。ハイスクール時代に野球の才能を発揮し、大リーグにドラフトという直前、飲酒運転で事故を起こして挫折。今はしがない水商売の下働き。田舎の母親から毎日のように電話がかかるマザコン男でもある。母親との会話は「ゴーゴージャイアンツ」が合言葉。あとはガールフレンドと安アパートに帰り、楽しむのが関の山。
 そんなとき、隣人のモヒカン男が急用でロンドンに帰るので、仕方なく猫を預かる。これが事件に巻き込まれるきっかけとなり、二人組のちんぴらに襲われ痛めつけられて入院。警察に連絡すると、どうやらロシアンマフィアが関連しているらしい。ちんぴらのひとりがハンクの野球帽を見て、「私を野球に連れてって」を歌いながら殴ったり蹴ったりする場面は、『時計じかけのオレンジ』の「雨に唄えば」を思い出した。
 担当の女刑事によると、ロシアンマフィアとは別にユダヤ人の凶悪な殺し屋二人組もハンクを狙っていて危険だという。おそらくは莫大な金が絡んでの事件だろう。
 そんなわけで、二枚目のジェラルド・バトラーふんするハンクがボコボコにされて、次々に危機に陥り、死に目に遭いながら、どう立ち向かうのか。猫の運命は、いかに。
 配役が凝っていて、ガールフレンドがゾーイ・クラヴィッツ、女刑事がレジーナ・キング、ユダヤ人殺し屋兄弟が名脇役のリーヴ・シュレイバーとヴィンセント・ドノフリオ、その兄弟の母親が懐かしいキャロル・ケイン。バーの店主がグリフィン・ダン。最後にちらっと出て来るハンクの母親がノンクレジットだが、なんとあの人。

ペンギン・レッスン/The Penguin Lessons
2025 アメリカ/公開2026
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:オースティン・バトラー、レジーナ・キング、ゾーイ・クラヴィッツ、マット・スミス、リーヴ・シュレイバー、ヴィンセント・ドノフリオ、ニキータ・ククシキン、ユーリー・コロコリニコフ、グリフィン・ダン、キャロル・ケイン

←飯島一次の『映画に溺れて』へもどる