第724回 アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし
令和八年一月(2026)
新宿 新宿ピカデリー
事前の情報を調べず、予告編も見ず、ぶらっと映画館に入ったら、面白い作品だったという経験は貴重である。最初から興味のないジャンルは敬遠するので、映画館の前で、タイトルやポスターで興味を惹かれる作品なら、ついチケットを買ってしまう。
顔に金具を付けた女性のポスター、タイトルが『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』とくれば、二重人格を題材にしたデ・パルマ監督『悪魔のシスター』のようなホラーかもしれない。その手の作品はけっこう好きなのだ。
始まると馬車に揺られる三人の女性、服装からして現代ではない。十六、七世紀風。貴婦人レベッカとふたりの娘。長女エルヴィラは絵入りの詩集を読みながら、白馬の王子様との結婚を夢見る純情な少女。妹アルマはまだ恋にも男性にも興味はない。馬車は立派な貴族の館に到着し、初老の当主が三人を迎える。子連れのレベッカが当主オットーと再婚。オットーには年頃の娘アグネスがいる。五人での最初の楽しい夕食。その場でオットーが突然血を吐いて倒れて急死。貴族であっても、財産はそれほどなく、費用のかかる葬儀は延期される。
そんな時、城から知らせが届く。三か月後に舞踏会が開かれ、貴族の娘たちが招待され、婚姻の相手選びとなるのだ。アグネスとともに、義姉妹のエルヴィラも招待状を手にし、舞い上がる。舞踏会で王子様に見初められることを夢見て。
再び未亡人となったレベッカは、今更自分の良縁は無理なので、エルヴィラを舞踏会で売り込む計画を立てる。継子のアグネスは美人でダンスの才もあるが、エルヴィラは容貌にしても、ダンスにしてもさほど特出していない。そこで、母は娘の美容整形とダンスのレッスンに大金をつぎ込む。麻酔のない時代、鼻を削られ、目を手術され、苦痛に耐えるエルヴィラ。美しいアグネスは馬番との密通が発覚し、懲罰で召使同様に冷遇される。
なるほど、そうだったのか。かぼちゃの馬車もガラスの靴も出てこないが、灰かぶりのステップシスター、エルヴィラを少しは応援したくなった。
アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし/Den stygge stesøsteren
2025 ノルウェー・デンマーク・ポーランド・スウェーデン/公開2026
監督:エミリア・ブリックフェルト
出演:リア・マイレン、アーネ・ダール・トルプ、テア・ソフィー・ロック・ネス、フロー・ファゲーリ、イサーク・カムロート、マルテ・ゴーディンゲル

