第694回 ウィキッド ふたりの魔女
令和七年三月(2025)
立川 シネマシティ
ライマン・フランク・ボームの児童文学『オズの魔法使い』が出版されたのは十九世紀の最後の年、一九〇〇年だった。この本はベストセラーとなり、ボームによって続編が次々と書かれて出版され、それらの翻訳は今でもハヤカワ文庫で読むことができる。二十世紀初頭には舞台ミュージカルとして上演され、ジュディ・ガーランド主演でミュージカル映画が作られたのが戦前の一九三九年、日本では一九五四年に公開。この映画はヒットし、原作同様もっともポピュラーなオズの物語の基本といえる。
その後、映画では続編の『オズ』、前日譚の『オズ はじまりの戦い』、黒人版『ウィズ』など、いろんな形で描かれており、ジョン・ブアマン監督の『未来惑星ザルドス』に影響を与え、レネ・ゼルウィガー主演『ジュディ 虹の彼方に』もオズの関連作である。私は一九七四年、日本テレビで半年間放送されたシェリー主演のTV版も観ている。
ブロードウェイでミュージカル『ウィキッド』が公演されたのが二〇〇三年、今回の映画『ウィキッド ふたりの魔女』はその舞台劇の前半部の映画化である。
ドロシーに水をかけられ、悪い西の魔女が殺された。マンチキンたちが西の魔女が死んだことで大喜びし、歌って踊る場面から映画は始まる。そこに善い魔女グリンダが現れ、平和を告げる。マンチキンの民がグリンダに問いかける。あなたは西の魔女と友達だったのではありませんか。眉をくもらせるグリンダ。そして口をむずむず。そこから後に西の魔女となるエルファバとグリンダとの友情物語が語られる。
全身緑色に生まれついたエルファバは両親から疎まれながらも、強力な特殊能力、魔法の力を備えていた。足が不自由の妹ネッサローズとともに大学に進学したエルファバはグリンダと出会い、お互い反感を抱きながら、いつしか仲良くなる。やがて魔力を認められ、憧れのオズの都に招かれるも、大王の無能さと欺瞞に満ちた支配欲に失望し、権力に逆らって物語のヴィラン、西の魔女となる。歌と踊りが素晴らしく後半が待ち遠しい。
ウィキッド ふたりの魔女/Wicked
2024 アメリカ/公開2025
監督:ジョン・M・チュウ
出演: シンシア・エリヴォ、アリアナ・グランデ、ジョナサン・ベイリー、イーサン・スレイター、ボーウェン・ヤン、マリッサ・ボーディ、ピーター・ディンクレイジ、ミシェル・ヨー、ジェフ・ゴールドブラム