第700回 リトル・ショップ・オブ・ホラーズ
昭和六十三年七月(1988)
中野 中野名画座
『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』は最初、一九六〇年にロジャー・コーマン監督でコメディ色の強いSFホラー映画として作られた。日本では劇場公開されず、その後一九八二年にオフ・ブロードウェイでミュージカルとして舞台化され、その舞台が一九八六年に映画化。メル・ブルックスの『プロデューサーズ』と同様の経過である。
ミュージカル版の時代設定はオリジナル版に合わせて一九六〇年になっている。ごちゃごちゃした町の小さな花屋。そこで働く小柄な眼鏡の青年シーモア。孤児だったらしく、花屋の主人ムシュニクに拾われ、こき使われている。同じ花屋の女店員オードリーに気があるが、内気で不器用なため思いは伝わらず、彼女はサディスティックな歯科医の恋人オリンに虐待されながら別れられずにいる。
花屋は繁盛せず、ムシュニクがいよいよ廃業しようとしたとき、シーモアが密かに育てていた食虫植物らしき花をショウウィンドウに飾ったとたん、客が詰めかけ、大繁盛。シーモアは花にオードリーⅡと名付ける。たまたま薔薇の棘で傷ついた自分の血を与えると花は大きくなり、言葉を発する。
「食わせろー」と歌うオードリーⅡ。
シーモアはオードリーを虐待するオリンを殺害して、オードリーⅡに餌として与える。花は巨大化し、マスコミに取り上げられ、シーモアは有名人となり、オードリーと仲良くなるが、モンスターとなったオードリーⅡの要求はますますエスカレートする。はたして、シーモアはオードリーとハッピーエンドを迎えられるだろうか。
映画化の前、一九八四年に銀座博品館劇場で翻訳版が上演されたのを観劇した。シーモアが真田広之、オードリーが桜田淳子、ムシュニクが宝田明、オリンが陣内孝則だった。この舞台の眼鏡の真田広之は、後の和田誠監督『怪盗ルビイ』の気弱な青年に通じる。
映画でサディスト歯科医を演じたスティーヴ・マーティンは、その後、犯罪ミステリーの『ノボケイン』で、悪事に巻き込まれる歯科医役で主演している。
リトル・ショップ・オブ・ホラーズ/Little Shop of Horrors
1986 アメリカ/公開1987
監督:フランク・オズ
出演:リック・モラニス、エレン・グリーン、ヴィンセント・ガーディニア、スティーヴ・マーティン、ジェームズ・ベルーシ、ジョン・キャンディ、ビル・マーレイ