合評会

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川島怜子「袋の鼠」

袋の鼠 川島怜子「彦左衛門、なんとか出来ぬものか!」珍しく語気を強めた甘利は眉間に皺を寄せ、博多奉行・茨彦左衛門に迫った。「西の早良より山賊の杉一味、南よりは大宰府の粕屋遠江守政衝大軍、そしてこの彦左衛門が、二神山から三日月を抜け箱崎を背後...
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生田修平 「潜血便」

→PDF版で読みたい方はこちら潜血便 生田修平(1) 美容室で鏡に映る自分の姿を眺めると、老いを実感せざるを得なかった。白髪交じりかつ薄めの頭髪。全体的に艶がなく、ところどころにシミのある肌……。 この日は新しい発見があった。髪の毛や顔ばか...
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生田修平 「インフレ時代の学校経営~三部作」

→PDF版で読みたい方はこちらインフレ時代の学校経営~三部作 生田修平【黒板消し】 1970年代、列島は未曽有のインフレに直撃される。1974年の消費者物価指数は20%を超え、当時の福田赳夫蔵相は「狂乱物価」と命名した。物価高は小学校の経営...
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川島怜子「村雲の誘惑」

村雲の誘惑 川島怜子淡い赤が部屋のひと隅を照らす。パチッ、パチパチ、深更を深める夜二人きりの部屋に、灯る灯明の芯の微かな音が響く――「そなたを見ていると懐かしい…」米一丸はふと視線を落とした。村雲は華奢な指で、取っ手のある無骨な銚子で米一丸...
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生田修平 「幽霊」

→PDF版で読みたい方はこちら幽霊 生田修平 真夏の上野、午後4時、私は幽霊を見た。サラリーマンの格好をして、足があった。手はだらんと下におろすいつもの幽霊のポーズでガラス張りのビルの中を歩いていた。 会社に戻り、早速、同僚にその旨報告した...
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生田修平 「寝返り」

→PDF版で読みたい方はこちら寝返り 生田修平プロローグ 私は大学で水と油をつなぐ「界面活性剤」を勉強している。東アジアにある某国の政治史を研究していたおばあちゃん(祖母)が「政治の世界でも水と油がくっつくことがある」として次のような話をし...
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生田修平 「無人航空機」

→PDF版で読みたい方はこちら無人航空機 生田修平プロローグ 革命とはおおよそ想像もできなかった状況が生まれることである。大きな変化でも現時点で誰かがが思いつくようなものは革命とは言わない。2020年代、人工知能(AI)による「知能の産業革...
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生田修平 「フルネーム」

→PDF版で読みたい方はこちらフルネーム 生田修平  子どもの頃、吉太郎じいちゃんから聞いた話である。吉太郎は横浜の貿易会社に勤めていた。時は、1960年代後半。ファックスも普及しておらず(註)、連絡はもっぱら電話だった。 この会社は食品、...
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生田修平 「はなお」

→PDF版で読みたい方はこちらはなお生田修平 私は大学卒業後、メーカーに就職し、社会人として第一歩を踏み出した。25歳の春である。遅めのデビューは一浪二留による。 千葉・市原の工場に配属され、独身寮に入った。寮内は土足禁止だった。玄関で上履...
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生田修平「離職」

→PDF版で読みたい方はこちら離職生田修平 大下は娯楽サービスの会社で人事を担当している。従業員20人程度の小さな会社である。業績はまあまあだが、若手の人材不足が深刻だ。50代以上過多、20~30代過少の偏った年齢構成。初任給を上げるなどし...