生田修平「入札」

入札

生田修平

 自社工場内の施設の発注担当者は頭を抱えた。新工場建設に梅原プラント、松原建設、竹山工務店の3社が入札したのだが、驚くことに全く同じ価格だった。加えて、技術力、品質、納期、アフターフォローについても同等である。それでもどこか一社に決めなくてはならない。全くの同条件。違うのは社名だけ。社名で決めるしかなかった。
 「松竹梅の法則」に乗っ取り、松原建設が勝った。竹山工務店は次点で松原がこけた際の補欠となった。梅原プラントは完全に落選してしまった。社名で敗れた梅原プラントは悔しがり、社名を変更することにした。よほど悔しかったのだろう、「悔原プラント」と改名された。

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