生田修平「不敬罪」

不敬罪

生田修平

ある熟女がスーパーボールすくいに興じていた。スーパーボールを3つすくい、4つ目で破れた。熟女は3つを手に入れた。1つは娘にあげた。もう1つは自分で持つことにした。最後の一つをビルの屋上から、街中に思いっきり投げ込んだ。そのボールは街中を行き来し、最終的にその街の英雄である、紙田やすしの銅像にぶつかった。銅像はあっけなく倒れた。
熟女は不敬罪で起訴され有罪となった。懲役10年となったが、数年後突然出所が許された。
熟女が入所している間に歴史研究が進み、紙田やすしは英雄などではないことが判明し、紙田やすしの銅像を損壊することはもはや不敬には当たらないことがわかったからだ。「英雄」なんてこんなもんだし、銅像はさらにインチキ臭い。信頼できるのはスーパーボールだ。スーパーボールを「思ったよりはねないな」と、裏切られたことはない。

(文字数376字)

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