第14回日本歴史時代作家協会賞授賞式&受賞パーティー開催レポート

人気の歌舞伎役者も登場! 第14回日本歴史時代作家協会賞授賞式&パーティー

日本出版クラブホール|2025.10.24

第14回日本歴史時代作家協会賞授賞式(左から、三田誠広、アグニュー恭子、米原信、麻宮好、吉森大祐、佐々木裕一)
2025年10月24日(金)、秋の気配が深まる東京・神田神保町。 日本出版クラブホールにて、「第14回 日本歴史時代作家協会賞 授賞式&パーティー」が盛大に開催されました。

晴天の予報を裏切る雨天となりましたが、会場には、日本歴史時代作家協会の会員をはじめ、作家・編集者・書店員・出版関係者など、多くの来場者が集まり、熱気に満ちた祝祭の一日となりました。

イベントは「第一部 協会賞授賞式」「第二部 受賞パーティー」の二部構成で開催され、司会は飯島一次かずつぐ理事と西山ガラシャさんのお二人が総合司会を担当されました。
開会後、第一部の授賞式パートに入り、選考委員の理流りりゅうさんと青木逸美いずみさんが進行役を務めました。
最初に、三田誠広まさひろ選考委員長より、今年の各受賞作について講評が述べられました。

■ 三田誠広選考委員長による講評

三田誠広選考委員長 ● 新人賞:アグニュー恭子様『世尊寺殿せそんじどのの猫』(論創社)

「驚異的な作品」と評された本作。
ミステリーであり、足利直義ただよしを中心にした青春を描く恋愛小説でもあり、さらに史実を踏まえた歴史小説でもあるという、多層的な魅力が高く評価されました。

● 新人賞:米原信まいばらしん様『かぶきもん』(文藝春秋)

江戸の歌舞伎の賑わいと躍動感が見事に再現されており、「将来性のある作家である米原さんに、ぜひこの賞を受けていただきたいという思いが強かった」と三田委員長は語りました。
今年は、新人賞としては異例の“2作同時受賞”となりました。

● 文庫書き下ろし新人賞:麻宮好あさみやこう
『お内儀かみさんこそ、心に鬼を飼ってます おけいの戯作手帖』(コスミック時代文庫)

戯作見習いのおけいが成長していくシリーズ構成を前提とした企画で、その“世界の広がりと期待感”が高く評価されました。

● 作品賞:吉森大祐様『いばら 悪名奉行茨木理兵衛』(中央公論新社)

「不器用で真面目、嫌われ者なのに、読んでいくほど気になってしまう不思議な主人公」と三田委員長。
不器用で誠実な理兵衛が読者の心をとらえる構成は、著者の巧みな仕掛けであると賞賛されました。

■ シリーズ賞の発表

理流氏 進行役で選考委員の理流さんより、今年の「シリーズ賞」は佐々木裕一氏に授与されることが発表されました。

● シリーズ賞:佐々木裕一様
 「新・浪人若さま 新見左近」(双葉文庫)
 「公家武者 信平」(講談社文庫)
 「この世の花」(ハルキ文庫)
 以上3シリーズ

受賞理由については、受付で配布した第14回協会賞の小冊子に記載されているため、そちらをご参照いただきたいとの説明がありました。
代わりに、佐々木氏の出身地・広島県三次市の福岡誠志さとし市長から届けられた祝電が披露され、会場から大きな拍手が起こりました。

■ 表彰盾の授与とプレゼンター(花束贈呈)

三田誠広選考委員長からアグニュー恭子氏へ表彰楯を授与 全受賞者に三田選考委員長より表彰盾が授与され、続いて花束贈呈が行われました。 花束贈呈者は以下の4名です。

● 『奥州狼狩奉行始末』で第13回協会賞新人賞を受賞した、あずま圭一氏
● 『編み物ざむらい』で第12回協会賞新人賞を受賞した、横山起也たつや
● 歌舞伎界の若きスター、四代目 中村橋之助丈
● 慶長元年創業で現在も盛業中の老舗酒舗・豊島屋としまや本店の吉村俊之社長

東圭一氏から新人賞のアグニュー恭子氏へ、
中村橋之助丈から新人賞の米原信氏へ、それぞれ花束贈呈が行われました。
この場面は、事前に橋之助丈から花束贈呈があることを米原氏にお伝えしていないサプライズ演出で、大いに驚かれるとともに、会場は大きな拍手と笑顔に包まれました。

憧れの歌舞伎者・中村橋之助丈から花束をいただき、興奮している米原信氏 続いて、横山氏から文庫書き下ろし新人賞の麻宮好氏へ、東氏から作品賞の吉森大祐氏へ、そして吉村俊之社長からシリーズ賞の佐々木裕一氏へ花束が贈呈されました。

受賞者と贈呈者が並ぶ華やかなシーンに、会場からは温かな拍手が送られました。

■ 受賞者スピーチ

第14回日本歴史時代作家協会賞新人賞受賞のアグニュー恭子氏 ● アグニュー恭子氏(新人賞)

この日に合わせて北アイルランドから里帰りし、2歳の息子さんと英国人のご主人も会場に同席されました。
「小部数の出版で静かに世に出た作品でしたが、こうして評価していただき、本当に胸がいっぱいです」と、感謝の気持ちを込めて語られました。

第14回日本歴史時代作家協会賞新人賞受賞の米原信氏 ● 米原信氏(新人賞)

「19歳でオール讀物新人賞をいただき、今は22歳。橋之助丈から花束をいただけるとは夢にも思わず、膝が震えました」と、初々しい笑顔で喜びを表現されました。
歌舞伎への深い愛情と国文学への探究心が、本作の創作に繋がったと述べられました。

第14回日本歴史時代作家協会賞文庫書き下ろし新人賞受賞の麻宮好氏● 麻宮好氏(文庫書き下ろし新人賞)
「コスミック出版さんから(自著の)『恩送り』と『月のうらがわ』のいいとこ取りで、新シリーズを──と言われたとき、本当に私のための企画だと思いました」と語り、
「美しい箱をもらって、好きなものを好きに詰めていいと言われたような気持ちだった」と、創作への喜びを振り返られました。

第14回日本歴史時代作家協会賞作品賞受賞の吉森大祐氏● 吉森大祐氏(作品賞)

作品の背景である藤堂藩の藩政改革について触れ、
「有名な人物も事件も出てこない小説で、本当に不安でしたが、こうして届いたことが何より励みです」と感謝を述べられました。
また、兼業作家としての苦労を率直に語り、
「会社員として働きながら地道に書いてきました。今回の受賞で、また一歩進む勇気をいただきました」と締めくくられると、会場は温かい拍手に包まれました。

第14回日本歴史時代作家協会賞シリーズ賞受賞の佐々木裕一氏● 佐々木裕一氏(シリーズ賞)

持ち込み原稿でデビューした当時、編集者から
「賞は関係ない。書店のレジで“ピッ”と言わせる作家になれ」
と言われた言葉を胸に、15年間書き続けてきたエピソードを披露されました。
「200冊、300冊を目指して書き続けます」と力強く締めくくられ、会場は笑顔と大きな拍手で沸きました。

■ パーティーへ

日本歴史時代作家協会の菊池仁副代表理事授賞式後は立食形式のパーティーが開かれ、和やかな歓談の輪が広がりました。
最初に、協会の菊池仁副代表理事より開会の挨拶として、病気療養中の藤原緋沙子代表理事からのメッセージの代読と、乾杯のご発声がありました。
作家同士はもちろん、編集者・書店員・読者などが垣根なく語り合い、作品への想いや新しいプロジェクトの話で、会場は終始にぎやかでした。

■ ゲストスピーチ

本日のプレゼンターをお願いした、中村橋之助丈、横山起也氏、吉村俊之社長の3名に、ゲストスピーチもお願いしました。

歌舞伎役者の四代目中村橋之助丈● 中村橋之助丈
今回、私も『かぶきもん』を読ませていただきましたが、歌舞伎を題材にしながら、エンターテインメントとしての面白さが前面に出ていて、役者としても一人の歌舞伎ファンとしても、大変嬉しく拝読しました。

歌舞伎というと、“古典芸能を勉強しに行くもの”というイメージを持たれることが多いのですが、本来はエンターテインメントの一つです。一度でいいので、歌舞伎座など劇場に足を運んで、生の空気の中で芝居を楽しんでいただきたいと思っています。

『かぶきもん』の中には、楽屋で先輩方がああだこうだ言いながら舞台を作っていく光景が、とても生き生きと描かれていました。私たちが今もお稽古場でやっていることと、まったく変わらない世界です。古いものの埃を払うだけでなく、今の時代のお客様に楽しんでいただける歌舞伎をつくるために、日々試行錯誤している姿を思い出しながら読みました。

本日は、受賞者の皆様、誠におめでとうございます。ありがとうございました。

小説家で編み物作家の横山起也氏● 横山起也氏
先ほど菊池先生から、“文庫書き下ろし作家は三ヶ月に一冊出さないと忘れられる”というお話がありました。私はなぜか“二ヶ月に一冊”と記憶してしまいまして(笑)、来年四月まで、二ヶ月に一冊のペースでどうにか書き続けてきました。今日改めて“三ヶ月でいい”と聞いて、少しホッとしておりますが、これからも頑張ってまいります。

本日はせっかくの機会ですので、少しだけ編み物の話をさせてください。数年前まで、編み物の世界は五十代以上のユーザーが中心で、二十代・三十代・四十代は少数派でした。それがここ1〜2年で、特に若い世代の間で人気が急上昇しています。原宿にはアイドルがプロデュースする毛糸店ができ、世界的なデザイナーがラフォーレ原宿で編み物の個展を開くなど、関連商品の売上も二倍、三倍、多いものでは五倍になっていると聞きます。

なぜそんなことが起きているのか――AIとかITとかのタイパを重視する対極に、読書とか編み物とかに時間を費やし、パソコンやスマホから離れる時間を作る、近代化以前の知恵とかストーリーを求める時代が来ていると思います。おそらく時代小説で得られるような知識がこれから必要になるじゃないかと思っています。

江戸からの老舗酒舗・豊島屋本店の吉村俊之社長● 吉村俊之社長
当店・豊島屋は、慶長元年(1596年)に神田鎌倉河岸で初代・十右衛門が創業した酒屋で、東京最古の酒場とも言われております。当時は酒造りは行わず、関西から下り酒を仕入れて、簡単なおつまみとともに提供しておりました。そのことから、“居酒屋のルーツ”の一つとも言われております。

酒造りを始めたのは明治に入ってからで、『金婚』という銘柄を中心に造っております。現在は東京・東村山の蔵で仕込みを行い、神田明神様や明治神宮様の御神酒としてもお納めしております。

純米無濾過原酒 「十右衛門」本日は、弊社の創業者の名を冠した純米無濾過生原酒『十右衛門』を、協会様からのご依頼で少量ですがお持ちしております。香りは控えめながら味わいは深く、キレの良いフレッシュなお酒です。国内外の品評会でも賞をいただいておりますので、ぜひこの機会に江戸から続く味をお楽しみいただければ幸いです。

会場内では、出席者に『十右衛門』が振る舞われ、遥か江戸に思いを馳せる一コマがありました。

歓談の時間では、会場の皆で受賞者を祝福するとともに、会員同士の交流、出版社の編集者との情報交換など、話に花が咲きました。

途中で、協会の橘かがり理事より、10月に発足した女子会チームが中止になって企画した、イベント「江戸の食文化を学ぶ、味わう、語る」の報告がなされました。
さらに久宗圭一理事より、電子書籍事業の進捗など協会の今年の活動報告とこれからの計画が紹介されました。

森田健司理事中締めでは、先ごろ時代小説集『巌流の里』(松柏社)を上梓した森田健司理事より、協会で行っている合評会の活動が紹介されました。

今年の協会賞は、とりわけ「新しい歴史小説の芽が力強く育っていること」を実感させる授賞式となりました。
受賞者の言葉からは、挑戦する勇気・物語への情熱・読者への感謝がにじみ、会場の誰もがその熱量を共有した一日でした。

また、歴史時代小説界だけでなく、歌舞伎界や、酒造・小売・居酒屋と多角的に酒の魅力を伝える老舗からゲストをお迎えし、華やかな中にも学ぶことの多いお話を伺うことができ、有意義なひと時となりました。

日本歴史時代作家協会の一番大きなイベントということもあり、多くの会員が会場に駆けつけ、受付や司会、ゲストのアテンドなど、さまざまな役割でご活躍くださいました。
この場を借りて、あらためて御礼を申し上げます。

日本歴史時代作家協会は、今後も歴史・時代小説の魅力を広く届けるべく活動を続けてまいります。
来年の第15回協会賞授賞式は、2026年10月16日(金)に開催いたします。さらに新しい才能が輝くことを期待しております。

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